泉州水なす・水なす漬の北野農園

【目次】

泉州水なすの歴史

 日本のナスの歴史は奈良時代(7世紀頃)にインドの僧により、中国を経て日本に持ち込まれたのが始まりです。その時代は奈須比(なすび)とよばれ、栽培も同時期に始まったようです。 大阪泉州地域は当時、和泉国として栄え奈良の平城京からの文化も盛んに入ってきていました。それを証明するかのように、大阪に存在する5つの国宝のうち4つが、和泉の国のあった大和川以南にあります。平城京の恩恵を受けながら栄えた和泉の国にナスの栽培法も同じように持ち込まれたものと考えられます。

インドから

 水なすの記述が歴史上に登場するのは室町時代。『庭訓往来』(※)に沢茄子(ミツナス)と記載されており、これが貝塚市澤地区で栽培されていた水なすの原種と考えられています。そこから昭和後期~平成に改良、ブランド化され、現在の「泉州絹皮水なす」という品種が「泉州水なす」として名をはせることとなりました。

庭訓往来

(※【画像】庭訓往来(ていきんおうらい)144ページ目右下に「沢茄子」の文字が存在しています:庭訓往来とは往来物(往復の手紙)の形式をとる寺子屋で習字や読本として使用された教科書の一つです。)

和泉の国のため池文化と水なすのお話

 泉州地域はかつて清水が多く湧き出たというのが由来で和泉の国(泉の国いずみのくに)と呼ばれていました。 とはいっても泉州地域は温暖で雨の少ない地域な上、淀川や大和川などの大河川から少し離れているため、水田稲作に必要な水を確保するのに農業用水源の「ため池」が多く作られた地域でもあります。ため池の歴史も深く日本最古のため池といわれる狭山池も大阪府南部に位置しています。「ため池」は泉州地域の人々と密接にかかわっておりため池にかかわる民話なども多くあります。また水を大事にし、水を奉る風習、祠など数々ある地域でもあります。大阪府下のため池の約6割は泉州地域に存在しているのです。

ため池地図

 この豊富にあるため池が、現在特産品となった泉州水なすを支えているといっても過言ではありません。かつてため池は米作りに使うものと決められていたため、水をたくさん必要とする水なす栽培は今よりもっと難しいものでした。水なすは家庭で食べる分や畑仕事の折、のどの乾きを癒すために植えられるくらいのものだったのです。昔の泉州の特産といえば泉州黄たまねぎ、フキ、たばこ、里芋などでした。しかし、時代と共に稲作が減ったことでため池の水を水なす栽培に利用できるようになったこと、また水なすがブランド化されたことが相まって水なす栽培をはじめる農家さんが増えました。水なす農家が増えても多くの水を供給できるため池が多数存在したからこそ現在、泉州水なすは地域の特産品となることができたのです。

ため池

泉州の色々な古いなすび

色々な水なす

栽培が始まった当初は現代のように種苗屋さんがないため農家は各々自家採取で種を繋いでおり、そのため地域地域によって水なすはさまざまな種類のものも生まれました。

【澤なす】

色々な水なす

大阪府貝塚市の澤地区で栽培されていた澤なすは 水なすの原種の一つとされています。 今は貝塚市に一軒、和泉市に一軒の計2軒の農家さんが自家採種により澤なすに近い系統種を栽培されています。 (ご本人いわく澤なすという確証は無いそうです)また本水なすという形で特定の漬物屋さんにのみ出荷されているとのことです。 2軒の農家さんはそれぞれで自家採種をされていて、だんだんと現在の泉州絹皮水なすに形質が似てきているとの事です。 2013年現在泉州地域で2軒の農家さんでのみ存在している貴重品種の一つです。

澤なすの特徴は泉州水なすに比べ色が薄く、花が咲いて、その中から実が出てくる過程で花びらが付いたままだと花びらをとってもその部分が日焼けし紫にならず、白いままだそうです。 肉質は泉州水なすに比べしっかりしていて、生で食べられ、果肉の甘みが非常に強いのが特徴です。

【馬場なす】

色々な水なす

馬場なすは貝塚市馬場地区でのみ栽培されている門外不出のもう一つの水ナスの原種です。 形は長細く一見名がなすのように見えます。 地区の数軒の農家が自家採種をして現在まで繋いできています。現在ではハウス栽培、露地栽培ともに 少しずつ栽培面積を増やしていますがまだまだ市場ではめったに目にすることはありません。 奥貝塚・彩の谷「たわわ」という直売所でシーズンになると購入可能ですが近年の泉州水なす、馬場なす人気で 時には購入数制限がかかることもあるほどです。馬場なすの特徴は皮の柔らかさ、果肉の甘み、皮の薄さです。 食感は現在の泉州水なすに近く生でサラダに十分使えます。 種のルーツは諸説あり、その一説では馬場地区に隣接する木積たけのこで有名な 貝塚市木積地区から種が復活したとの説もあります。 木積地区には大阪で5つしか無い国宝の一つで大阪最古の木造建築「孝恩寺」も 存在しその歴史の古さは奈良時代にさかのぼります。

【樽井巾着なす】

 樽井巾着なすは大阪泉南市樽井地域でひっそりと種が繋がれていた泉州水なすの一種です。 今は市場からも生産現場からも完全に姿を消しています。 泉州地域の古い漬物屋さんのお話では「浅漬けにすると一番うまいのは巾着水なすや」だそうです。 しかし伝統品種のため漬けた巾着水なすを取り出した際の色艶の悪さから現在の水ナスブランドの系統選抜からは外されてしまったとのこと。 貴重な樽井巾着なすの種は大阪府泉州農と緑の総合事務所の職員さんの一人が大切に保管していたものが残っているのみとなっています。

樽井

 また北野農園では2014年度生産において樽井巾着水なすの復活を目指し 3月より播種し栽培に取り組んでいます。巾着なすの系統は新潟県に長岡巾着なす(亀田巾着)、 魚沼巾着なすが存在しますが どちらも生食向きではなく樽井巾着なすとは少し違うのかもしれません。 元々新潟の梨なすや十全、八石なすなどは泉州水なす系で生でも食せるそうですが 新潟の巾着なすは露地栽培が主との事で現代の泉州水なす栽培ノウハウで復活させた時の 食味がどのようなものか興味深い。

巾着

【上之郷なす】

 泉佐野市上之郷地区で栽培されていた品種の泉州水なす。 ことわざに「日根野あずきに上之郷なす・・」と出てくるそうですが詳細は不明ですが存在したことは確かです。

【その他新しいなす】

 近年泉州水なすが全国的に受け入れていただけるようになり、大阪泉州より全国へ 一大食文化が広まりつつあります。同時に大手種苗会社様からも新しい品種が次々と発表されて います。日本の茄子=水なすになる日は近い??頑張れ水なす!!! 京都府、奈良県、愛知県では水なすとして、和歌山県では泉なすとして栽培されています。 また前述させていただきましたが、新潟県の梨なすや十全なすもルーツは泉州水なすとのことです。 紫水、SL紫水、泉州系水茄子などさまざまで今後も水なすとは?ページでも紹介させていただこうと 考えています。

北野農園の取り組み

2017年茄子フォーラム 20017年大阪天王寺で開催された茄子フォーラムの様子をご紹介します。